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MUSIC INSTRUMENT HISTORY

音のしくみでたどる、楽器の発展史

チェンバロからピアノへ。ヴァイオリンの製作技術から、サクソフォーンとフルートの改良へ。楽器の発展は、音色・演奏法・名曲の生まれ方を変えてきました。

西洋音楽史を中心に、所蔵品と博物館の解説をたどります。各楽器の発展には多くの製作者が関わり、旧来の楽器も今日まで演奏されています。年号は代表的な史料や改良の時期であり、すべての楽器の「最初の誕生年」ではありません。

HOW SOUND IS MADE

鍵盤が同じでも、音の出し方は違う

楽器発音のしくみ演奏表現の特徴
チェンバロ弦をはじく打鍵の強さだけでは強弱を調整しにくい
クラヴィコード金属片が弦に触れる弱音の範囲で強弱・揺れを表現できる
初期〜現代のピアノハンマーが弦を打つ打鍵に応じた豊かな強弱を表現できる

「鍵盤の発明から順に新しいものへ置き換わった」のではなく、異なる発音方法の楽器が並行して使われた点が大切です。

01
15世紀以前に成立/ルネサンス〜バロック

チェンバロ(ハープシコード)

鍵盤・撥弦楽器

どのように音が出る?

鍵盤を押すと、爪に相当する部品が弦をはじいて音を出す。

音楽史で何が変わった?

ルネサンス期からバロック期まで、独奏、室内楽、通奏低音に広く使われました。現代のピアノとは異なり、鍵盤を押す強さだけでは連続的な強弱を付けにくく、音色や音量の変化はストップ・鍵盤段数などの仕組みにも依存します。

ピアノの『古い機種』ではなく、独自の響きとレパートリーを持つ楽器です。

所蔵品・研究資料:メトロポリタン美術館 — フランドルのチェンバロとヴァージナル ↗

02
15世紀以前から/16〜18世紀に普及

クラヴィコード

鍵盤・打弦楽器

どのように音が出る?

鍵盤の端の金属片(タンジェント)が弦に触れて発音する。

音楽史で何が変わった?

小さな音量のため、家庭での練習や作曲に適した鍵盤楽器でした。鍵盤の押し方によって繊細な強弱や音の揺れを付けられますが、現代の大きな演奏会場で響くピアノと同じ用途ではありません。

『ピアノが発明されて初めて鍵盤に強弱が生まれた』という理解は不正確です。

所蔵品・研究資料:メトロポリタン美術館 — クラヴィコード所蔵品の解説 ↗

03
16世紀半ば/北イタリア

ヴァイオリン

弓で弦をこする弦楽器

どのように音が出る?

弓で弦を振動させ、胴の共鳴を使って音を響かせる。

音楽史で何が変わった?

現在のヴァイオリン属に近い形は、16世紀半ばのブレシアやクレモナで整えられました。アマティ一族、後のストラディヴァリらの製作技術が弦楽器の発展を支えました。

特定の一人がヴァイオリンを突然発明したのではなく、先行する擦弦楽器と職人たちの改良の歴史があります。

所蔵品・研究資料:メトロポリタン美術館 — アマティとストラディヴァリ ↗

04
1700年ごろ/イタリア・フィレンツェ

初期のピアノ(フォルテピアノ)

鍵盤・打弦楽器

どのように音が出る?

ハンマーが弦を打ち、鍵盤の強弱に応じて音量を調整できる。

音楽史で何が変わった?

クリストフォリは1700年ごろ、チェンバロと似た外形にハンマー式の機構を組み込んだ楽器を製作しました。現存する1720年製のピアノがメトロポリタン美術館に所蔵されています。当時の鍵盤数や音色は、現代の88鍵のグランドピアノとは異なります。

チェンバロ→初期ピアノ→現代のピアノを一方向の単純な置き換えとは考えません。楽器は長く共存しました。

所蔵品・研究資料:メトロポリタン美術館 — クリストフォリとピアノの誕生 ↗

05
18〜19世紀/産業技術の発展とともに

演奏会用ピアノの発展

鍵盤・打弦楽器

どのように音が出る?

弦・ハンマー・響板・支柱や金属の補強などの改良を重ねる。

音楽史で何が変わった?

19世紀には楽器製作者が構造を強化し、音域・音量・連打性などを改善しました。1827年のブロードウッド製グランドピアノには、金属製の補強部材を用いた構造が確認できます。リサイタルや大規模な演奏会の広がりとも結び付きました。

現代のピアノの仕様を、モーツァルトやショパンが当時使った楽器にそのまま当てはめないことが重要です。

所蔵品・研究資料:メトロポリタン美術館 — ブロードウッド製グランドピアノ(1827年) ↗

06
1846年/フランス

サクソフォーン

シングルリードを用いる管楽器

どのように音が出る?

マウスピースに取り付けたリードを振動させ、管内の空気を鳴らす。

音楽史で何が変わった?

アドルフ・サックスが1846年に特許を取得しました。金属製の管体を持ちますが、発音はリードによるため木管楽器に分類されます。軍楽隊などに普及し、後世にはジャズ、ポピュラー音楽、クラシックでも使われるようになりました。

『金属でできているから金管楽器』ではありません。楽器の分類には発音原理が関わります。

所蔵品・研究資料:メトロポリタン美術館 — アドルフ・サックス製アルトサクソフォーン ↗

07
1847年/ドイツ

ベーム式フルート

気流で発音する木管楽器

どのように音が出る?

歌口の縁に当たる空気の流れが管内の空気を振動させる。

音楽史で何が変わった?

テオバルト・ベームは音孔の配置やキーの機構などを改良し、1847年に新しいフルートの仕組みを確立しました。スミソニアン博物館には1848年にミュンヘンで製作された実物が残っています。

金属製でも、発音原理と演奏上の系譜から木管楽器として扱います。横笛自体の起源が1847年という意味ではありません。

所蔵品・研究資料:スミソニアン国立アメリカ歴史博物館 — ベーム式フルート(1848年製) ↗